鴨井院長による動画解説
受診までの経過
長年、マラソンにも参加し、200km/月程度走ることを日課としてきました。両側ともふくらはぎの肉離れを繰り返していましたが、しばらく休めば復帰することができていました。2か月前に、ふくらはぎに強い突っ張りと痛みが生じました。数日休むと症状が無くなるため、軽くジョギングをしてみるのですが、1km程度で同じ状態となってしまいました。それを繰り返すため、2週間休めてみましたが、やはり同様でした。スポーツクリニックを受診し、エコー診察を受けました。しばらくすると走る許可が出るのですが、やはり走っては痛みということを繰り返していました。MRI検査も受け、複数個所の整形外科やスポーツクリニックで見てもらいましたが、何故走れないのかが分からないと言われました。インソールも作りましたが、走れるには至っておらず、当院を受診されました。
診察時の所見
エコー検査では、肉離れの所見は見られず、その他の明らかな組織損傷も認められませんでした。アキレス腱周囲も含めて全体的に硬い印象でした(線維化所見あり)。慢性的な肉離れ後遺症、両側腓腹筋痛症と診断のうえ、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
血管造影を行うと、腓腹動脈でモヤモヤ血管ともとれるような濃染像が通常よりも強く認められました。同血管は筋肉枝であるため、正常でもモヤモヤ血管のように紛らわしく見えることがありますので、正常なのか異常なのかは慎重に判断しなければなりませんが、気になる所見ではありました。同血管および腓骨動脈など、腓腹部の筋肉および周囲組織に関わる血管に対して治療を行い終了しました。治療中は再現痛も確認できました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。


治療後の経過
治療後2週間、走っていないためまだ改善しているかどうかはわかりませんでした。治療後1ヶ月くらいからジョギングを再開していただきました。5kmずつ2日ほど走ってみましたが痛みはありませんでした。その後、1日おきに6kmを5分50秒/kmで走ってみましたが問題ありませんでした。治療後2ヶ月、順調に経過していたため、諦めていた大会への参加を決断し、2.5kmのコースを無事完走しました。ペースを上げても大丈夫でした。次はハーフマラソンに出場することを目標として、その後も徐々に運動強度を上げていきました。治療後4ヶ月、週に2-3回のペースで17km走りましたが大丈夫でした。通常どおりに走れている感覚はありましたが、試合になると思わず一生懸命に走ってしまうためまだ心配でした。ハーフマラソンを走るのは、受傷前にフルマラソンを走って以来でした。現在、治療後5ヶ月までの追跡となりますが、ふくらはぎの痛みは再燃することなく順調に経過されています。目標は高く、引き続き慎重にフォローアップしているところです。ベテランランナーでありご自身の身体を熟知されているため、無理をせず身体と相談しながら徐々に運動強度を上げておられます。まずは走れるようになり本当に良かったと思いますが、ご本人の目標を達成できるよう引き続きしっかりとサポートさせていただきたいと思います。