肘:テニス肘・ゴルフ肘など 【30代:男性】ステロイド注射後もすぐにぶり返していた難治性の重症テニス肘(上腕骨外側上顆炎) 2022.06.05 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 ゴルフや筋力トレーニングの負担などで、半年前から左肘の外側に痛みがありました。整形外科でステロイド注射を受けましたが、2日くらいで痛みがぶり返してしまいました。整骨院での電気治療なども受けたが改善しないため当院を受診されました。 診察時の所見 左肘の外側(左上腕骨外側上顆)において、軽く触れただけでも強い痛みが生じ、手首を上に返す動作(背屈)もほとんどできないほどの状態でした。エコー検査では同部位に一致して異常血流信号増生(モヤモヤ血管を反映)を認め、腱腫脹および一部腱の変性所見(黒く抜けた低エコー領域)を認めました。旺盛な炎症所見に加えて、ステロイド注射後もすぐに再燃してしまうような治療経過より重症のテニス肘と判断し運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。 治療の所見 外側上顆に分布する血管を複数個所治療しました。画像は橈側反回動脈造影ですが、モヤモヤ血管が濃染像として描出されています。治療後は画像上速やかに消失しました。 治療後の経過 治療2日後から痛みが改善してきました。2週間後の再診時、たまに押すと痛いものの以前のようなたまらない痛みはなくなったとのことでした。エコーでは異常血流信号は完全に消失しており、腱腫脹も軽減されていました。元が重症でしたので再度1か月後に来院していただいたところ(治療後1ヶ月半)、全く痛みはありませんでした。異常血流信号は引き続き認められず腱の状態もさらに改善していました。その後、球数を制限して徐々にゴルフの練習なども再開されましたが、治療後3ヶ月でも痛みなく経過しておられたため終診となりました。繰り返しのステロイド注射は腱を傷めてしまう懸念があり慎重に用いる必要がありますが、一時的に炎症を鎮める効果は強いです。ステロイド注射後もすぐにぶり返していた経緯やエコー検査の結果から、当初はかなり激しい炎症状態であり重症であったため慎重に経過観察をしましたが、予想以上に早期から改善してその後の再発もなく順調に経過されました。カテーテル治療の効果もさることながら、ご本人の安静に対する意識が高く、完全によくなるまでは無理せずにゴルフや筋力トレーニングなどを一切控えていただいたことが良かったのだと思います。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 テニス肘の詳しい病状説明はこちら 【70代:女性】エホバの証人信者に生じた6回水を抜いても治らなかった右肩の激痛(変形性肩関節症) 前の記事 【50代:女性】サルコペニアを合併した重症坐骨神経痛~肝硬変、骨粗鬆症、サルコペニア、圧迫骨折、仙腸関節障害、変形性腰椎症・・多重苦による寝たきり寸前状態から歩けるようになるまで~(サルコペニア、仙腸関節障害、変形性腰椎症) 次の記事
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